事業や製品サービスにおけるネーミングの役割と考え方について

事業や製品サービスにおけるネーミングの役割と考え方や手順について ネーミングの基本知識

開業を決めたら、事業計画の作成や資金の把握、屋号もしくは商号の決定、ドメインの登録、口座の開設、経理や法律の理解に行政への書類提出等、やること決めなければいけないことが山ほどありますが、その中で屋号や商号をどうやって決めようかと悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

屋号や商号の申請方法や法的な基本的知識は理解したけど、具体的にどんなネーミングにするか悩んでしまう。そんな方にネーミングについて知っておきたい基本知識、ヒントや手順を紹介します。

ネーミングとは

事業や製品・サービスに関わるネーミングは、何者かを伝える大事な名称です。単純な思いつきや、目立ちたいからとか、とりあえず間に合わせで名前をつけておくといったようなものではありません。ネーミングは事業や製品・サービスのコンセプトと深く関係し、顧客に何を訴求したいのかコミュニケーションする上で非常に大切な役割を果たすものです。ネーミングをどうやって決めようかと悩んでいる方は、事業コンセプトや製品・サービスのコンセプトを基盤に客観的な評価基準を持って考えることをお勧めします。

ネーミングの目的と役割

ネーミングとは、辞典などで調べると「名前をつけること。特に、商品や会社に名前をつけること。」や「商品名や会社名など、消費者に印象づけることを目的とするものについていう。」など、会社や商品に名前を付ける行為を指しています。つまり、商業的な目的と役割を担っているということになります。

ということはネーミングを考える際に大事なことは、どんな事業なのか?どんな製品・サービスなのか?その事業や製品・サービスの魅力を感じられる情緒性があることと、視認性、可読性、判読性などの機能性が備わっていることが、ネーミングを考える上での大切な条件ということになります。

ネーミングを考えるにあたって

前述の目的と役割から、ネーミングを考えるにあたって気をつけるポイントは、「事業や製品・サービスの本質や価値を伝える情緒性」と「視認性、可読性、判読性などの機能性」を考慮するということがわかりました。では、どうやって考えていけばいいのでしょうか。

まず「事業や製品・サービスの本質や価値を伝える」ために以下のような手順が必要になります。

①事業、製品・サービスのコンセプトを整理する
②整理した後、一番伝えたいことは何か、訴求ポイントを仮説する
③仮説したそれぞれの訴求ポイントの特性を整理する

これらの情報の整理ができたら、「視認性、可読性、判読性」を念頭におきながら、本題のネーミングづくりということになります。

④整理したら、ネーミングの材料を揃えていく
⑤材料が揃ったら、調理(ネーミング)していく
⑥調理が完了したら味見(評価基準を事前に用意して客観的に判断する)をする

最後に、ネーミング案をいくつか絞り込むことができたら、登記申請先の地域で既に登記されていないか、他社の商標(※)を侵害するようなことがないか調査します。調査方法は、国税庁や特許庁のホームページなどの検索サービスから調べることができます。

◯屋号の確認
Googleなどの検索エンジンで検索

◯商号の確認 
国税庁|国税庁法人番号公表サイト
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/

◯商標の確認
特許庁|特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

その上で商標登録まで検討する場合は、専門家でもある弁理士さんに相談、依頼することをお勧めします。

(※)商標について
商標とは、自社の取り扱う商品・サービスを、他社のものと区別するために使用する識別標識のことで、商標法という法律により守られています。商品・サービスの名称が保護の対象となり、商標の対象要素は「文字」「記号」「図形」「立体的形状」「動き」「ホログラム」「色彩」「音」「位置」などがあり、これらを組み合わしたものです。ロゴの場合は「文字・図形・記号」ということになります。商標権を取得するためには、特許庁から商標登録を受ける必要があり、権利者は、指定の商品・サービスについて、登録商標を独占的に使用できるようになります。

ネーミングづくりについて

ネーミングを考えるための手順で、材料を揃える項目と調理する項目を紹介しましたが、具体的に材料ってどういうこと?調理するってどういうこと?と思われる方もいらっしゃるかもしれないので、具体的にどういうことかご説明します。

ネーミングの材料を揃えるとは、ネーミングになり得るキーワードを抽出していく作業です。

材料を調理するとは、抽出したキーワードを素材にしてネーミング案をアウトプットしていく作業です。

例えば、事業コンセプトや製品・サービスコンセプトを整理した後、仮説した訴求すべきポイントを20字前後の見出しタイトルになるまで要約して、それらのキーワードを組み合わせて、あるいはそのキーワードをベースに言葉探しをしてネーミングにするといった作業です。

材料の収集方法

材料収集の中でも、言語変換で材料をストックする方法が一般的です。事業コンセプト、製品・サービスコンセプトから訴求すべきポイントを要約したキーワードを様々な視点で言語変換していくことで、材料をストックしていきます。

例えば、日本語のカタカナ、古語に変換してみる。または外国語のイタリア語、英語、中国語、ドイツ語に変換してみるといった具合に、各言語でどのように表現されているのかピックアップしていく方法です。

他にも、類義語、同意語などからもピックアップしていく方法もあります。また、事業コンセプト、製品・サービスコンセプトから訴求すべきポイントを要約したキーワードを抽象化して、自社の専門分野以外の分野ではどのように表現されているか各分野の専門用語の視点でピックアップしていく方法もあります。さらに、日常会話でしか使用しない言葉や擬音語、擬態語もピックアップしていくなど、言語に関わるものは全て材料になります。

注意することは、材料探しを始めると材料を出すことが目的になってしまい、気が付けば闇雲に思いつく限り探していて時間を浪費してしまう結果になることです。そうならないために事業コンセプトや製品・サービスコンセプトを整理しているので、その事業や製品・サービスの背景になる文化、顧客の生活シーン、特徴を踏まえて、だったらここかなといった具合に当たりをつけて作業することをお勧めします。

ネーミングで抑えておきたいポイント

ネーミングの材料を集めることができたら、次は調理(ネーミング)の工程になりますが、その前にネーミング作りで意識しておきたいポイントを紹介します。主に意識しなければならないことは、繰り返しになりますが2点です。

1点目:視認性、可読性、判読性などの機能性を持たせることができているか?

これは、ターゲットの生活者がその名称に触れる時に機能的であるかどうかです。例えば、見やすいのか、口にした時に読みやすいんだんろうか、メモ書きする時に書きやすいんだろうか、接客された時に聞き取りやすいんだろうか、話題にした時に話しやすいんだろうか、CMや広告を見た時に瞬間的に覚えてもらえるんだろうかといったことです。

だとしたら、文字数は少なくて簡潔に表現した方がいいよねとか、聞き取りやすい音がいいよねとか、スッキリした文字要素で構成されていた方が見やすいよね、といった機能性に気を使うことができるようになると思います。

2点目:事業や製品・サービスの本質や価値を伝える情緒性を表現できているか?

これは、事業コンセプト、製品・サービスコンセプトから仮説した訴求すべきポイントをしっかりターゲットの生活者に伝えることができているかどうかです。例えば、事業内容を想起させることはできているだろうか、製品・サービス内容を想起させることはできているだろうか、そのネーミングの製品・サービスが使用される環境を想定した場合、違和感がないだろうか、馴染むだろうかといったことです。

だとしたら、その分野の空気感、雰囲気が備わっていた方がいいよねとか、今までにない革新的なものだからあえてその分野の空気感や雰囲気とは違うものにしてみるのもいいよねとか、情緒性に気を使うことができるようになると思います。

以上の2点が抑えておきたいポイントであり、調理後の味見する(評価基準を事前に用意して客観的に判断する)ための評価基準にもなります。

調理(ネーミング)方法

では、前述の2つのポイントを意識の片隅に置いて、一般的にどんな調理(ネーミング)方法があるのか紹介していきます。料理方法は大枠で捉えると2つの方法があります。素材の味をそのまま活かす方法と素材を加工する方法です。

素材の味をそのまま活かす

素材の味をそのまま活かすというのは、視覚的な文字要素と意味と音の響きが既に良い状態で、そのまま活かしてしまう方法です。

例えば、訴求すべきキーワードを変換した材料から外国語でまとめてみるとか、ひらがなでまとめてみるとか、カタカナにしてみるとか、漢字にしてみた結果、視覚的にすっきりしていて音の響きもいい名称になったといった場合です。

出典:Japan Naming Association |日本ネーミング大賞 MUJI
出典:Japan Naming Association |日本ネーミング大賞 午後の紅茶
出典:Japan Naming Association |日本ネーミング大賞 一番搾り

素材を加工する

素材を加工するというのは、文字要素を省略してみたり、2つ以上のキーワードから文字要素を編集してみたり、キャッチコピーと融合してみたりなど、既成の言語との組み合わせや、他の言語の類推により、訴求したい事柄を造語として新しく作る方法です。

例えば、訴求すべきキーワードが2つあり、ネーミングに2つの意味を込めたい場合、その2つの文字要素の前後を切り取って一緒にしてみるといった成形方法です。

出典:Japan Naming Association |日本ネーミング大賞 AIRism
出典:Japan Naming Association |日本ネーミング大賞 ASKUL
出典:Japan Naming Association |日本ネーミング大賞 るるぶ

このように、2つの調理方法を元にネーミングを作っていくことができます。ここでは大枠の方向性を紹介していますが、ご自身でネーニングの書籍や、専門家のWEBサイトを閲覧すれば、より詳しい調理方法やテクニックを知ることができると思います。ぜひ調べてみてください。

外部にネーミングを依頼する場合に考慮することとメリット

前項で、ネーミングを考えるにあたってのポイントや作り方を紹介しましたが、その上でネーミングを出すことに限界を感じたら、専門家に頼ることも考えましょう。考え抜いて限界を感じているからこそ、何を表現してほしいのか明確な課題を専門家に伝えることができます。またその課題、仮説が良い方向性に向いているのかどうかの客観性を知ることもできますから、後々またネーミングを考える際に、自身の指標をひとつ持つこともできます。

また、専門家であれば、

①事業、製品・サービスのコンセプトを整理する
②整理した後、一番伝えたいことは何か、訴求ポイントを仮説する
③次に、仮説したそれぞれの訴求ポイントの特性を整理する

などもあなたの事業についてしっかり取材し、的確に情報を整理してもらえるでしょう。

そして

④整理したら、ネーミングの材料を揃えていく
⑤材料が揃ったら、調理(ネーミング)していく
⑥調理が完了したら味見(評価基準を事前に用意して客観的に判断する)をします

に対しても、専門家の経験値やノウハウで最適なネーミングを提案してもらえると思います。

では、外部に依頼する際に事前に何を準備しておいた方が良いでしょうか?

しっかり取材されるからといって丸腰にならず、自分なりに上記の①から③の情報を整理し、仮説を立てておくことは大切です。その上で専門家からさらに詳しい取材、ヒアリングを行なってもらいましょう。そうすることで自分では気づいていなかった特徴や独自性を発見する機会を得ることができますし、自分が出した仮説を考慮した意見や、自分では気がつかなかった仮説を提案してもらえた時に、なぜその提案をしてくれるのか類推することもできますし、専門家に対して具体的な質問を投げかけることもできます。

そして、何度も繰り返しになりますが、

・視認性、可読性、判読性などの機能性を持たせることができているか?
・事業や製品・サービスの本質や価値を伝える情緒性を表現できているか?

上記の2つを意識して、専門家と一緒に自身の事業、あるいは製品・サービスに相応しいネーミングを絞り込んでいきましょう。専門家は、素人ではなかなか意識することのできない、ネーミングの音の響き、言語の成形の知識や経験、方法論が豊富です。また素人では気が回らないちょっとしたテクニックで格段に言葉のクオリティを上げてくれます。自身で作るよりも何段階も質の高いネーミングを提案してもらえるでしょう。

ネーミング依頼先の選定について

いざ外部へ依頼するにあたってどんな方に依頼すればいいでしょうか?

一概にこれが正解というものはありません。自社、自身の事業のコンセプトや性質によって、依頼先を見極めることだと思います。

ネーミングの専門家にも得意とする分野や独自性があります。商標登録の専門家でもある弁理士の専門知識を活かしながら、ネーミングを提案して下さらる方もいらっしゃいますし、言葉の専門家でもあるコピーライターとしての広告の専門知識を活かしながら、ネーミングを提案してくださる方もいらっしゃいます。また組織として長期のブランディングを視野に入れたネーミング提案をして下さる専門会社もあります。自社、自身の事業の特性、性質、予算を考慮して検討してみましょう。

まとめ

屋号、商号、製品・サービスに関わるネーミングは、商業的な目的と役割を担う何者かを伝える大事な名称です。

ネーミングで抑えておきたいポイントは、

・視認性、可読性、判読性などの機能性を持たせることができているか?
・事業や製品・サービスの本質や価値を伝える情緒性を表現できているか?

以上の2点を客観的な評価基準にして考えます。

ネーミングを考える為のプロセスは、

・事業、製品・サービスのコンセプトの整理
・一番伝えたいことは何か、訴求ポイントを仮説し、その特性を整理すること
・情報の整理後、ネーミングの材料収集を行い、調理する
・調理が完了したら、評価基準ををもとに客観的に判断する

といった工程をイメージしましょう。

その上でネーミングを出すことに限界を感じたら、専門家に頼ることも考えましょう。考え抜いて限界を感じているからこそ、何を表現してほしいのか明確な課題を専門家に伝えることができます。またその課題、仮説が良い方向性に向いているのかどうかの客観性を知ることもできます。専門家は、素人ではなかなか意識することのできない、ネーミングの音の響き、言語の成形の知識や経験、方法論が豊富です。自身で作るよりも何段階も質の高いネーミングを提案してもらえるでしょう。

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